カルシウムを多く含む食品には乳類(乳製品)、魚介類、海草などの藻類、豆類、野菜類の葉などがあります。特に牛乳やヨーグルト、チーズなどの乳類は、毎日摂りやすく体内でのカルシウムの吸収率もよい食品です。
牛乳コップ1杯(180g)で198mg、ヨーグルト(100g)で120mg、プロセスチーズ1切れ(20g)で126mgの含有量があります。
カルシウムといえば、骨ごと食べることのできる小魚などの魚介類を思いだす人も多いでしょう。かたくちいわしの煮干し(100g)2200mgをはじめ、めざし、ししゃも、しらす干しなどからも手軽にカルシウムを摂ることができます。
藻類もカルシウムが非常に豊富です。その代表のひじきには、100gあたり1400mgの含有量があります。こんぶ類にも100gあたり400mg~900mg程度あります。
意外にカルシウム量が多い食品に豆類があります。たとえばだいず(国産)には、100gあたり240mgのカルシウムがあります。このため大豆を原料にした豆腐、納豆、油揚げなどにもカルシウムが豊富で、毎日の食生活のなかでも摂取しやすい食品です。
そのほか、パセリ、きょうな(水菜)、モロヘイヤ、小松菜など野菜類の葉にもカルシウムが比較的多く含まれています。
カルシウムとリンは骨や歯の主要な構成成分になっていますが、リンだけを過剰に摂取しすぎるとカルシウムの吸収が阻害されます。カルシウムとリンは同じ割合で摂るのがもっとも理想的だとされています。
カルシウムを1日にどのくらい食事から摂ればよいのかを示した食事摂取基準は、年齢や性別で違いがあります。
推定平均必要量は、ある母集団に属する50%の人が必要量を満たすと推定される1日の摂取量です。推奨量は、ある母集団のほとんどの人が1日の必要量を満たすと推定される摂取量です。
できれば推奨量以上摂るようにしましょう。
男性では骨密度が急速に増加する12歳~14歳の時期に推定平均必要量で800mg、推奨量で1000mgともっとも多く摂取する必要があります。女性でも同様に12歳~14歳の時期に推定平均必要量で650mg、推奨量で800mgともっとも多く摂取する必要があります。 15歳~29歳では推定平均必要量で男性は650mg、女性は550mg、推奨量で男性は800mg、女性は650mgになっています。
ヒトは一生のうちで骨にカルシウムを急速に蓄積する時期があります。それは乳幼児期と思春期です。女性はこれにつけ加えて、妊娠中も胎児のためにカルシウムが必要になります。
男女ともにカルシウムの最初の蓄積期である乳幼児期をすぎると、男性は12歳ごろからふたたび骨密度が急速に増加し始め、13~16歳ごろにピークになります。その後、じょじょに増加の割合が減少し、20歳くらいまでに骨密度の増加が完了します。それ以降はそのままの状態が続き、60歳をすぎると少しずつ骨密度が減少していきます。男性は中学生から高校生の時期にもっとも骨量が増加する、というわけです。
よくカルシウムが不足すると怒りっぽくなったり、イライラするといわれています。
カルシウムには、神経細胞内で情報伝達したり、筋肉を収縮させるといった重要な役割があります。そのため、カルシウムが極端に不足すると、これらに障害が発生するわけです。
そんなことからカルシウム不足になるとイライラする、といわれるようになったのでしょう。
とはいえ、カルシウム不足により精神的に不安定になるような症状があらわれるのは、カルシウムが極端に不足した場合で、筋肉のけいれんなどの症状をともなうようになります。こうなると、たんにイライラするよりもかなり深刻です。
身体の体液や血液中にあるカルシウム濃度は常に一定になるよう調節されています。これはカルシウムが少なくなると、副甲状腺ホルモンなどの働きにより、骨のカルシウムが利用されカルシウム濃度を上昇させるからです。
反対に、血液中のカルシウムが増えすぎると、甲状腺からカルシトニンというホルモンが分泌され、血液中のカルシウム濃度を低下させます。
ですから、多少、食事からのカルシウム摂取量が少なくなっても体液や血液中にあるカルシウム濃度が極端に低下することはありません。むしろ食事からのカルシウム不足が慢性化すると、それだけ副甲状腺ホルモンの分泌が盛んになり、骨からのカルシウム流出が多くなります。
その結果、細胞や血液中のカルシウム濃度だけが上昇した状態が続き、血管を収縮させ高血圧になったり、血管にカルシウムが沈着し動脈硬化になるなど、さまざまな障害が発生します。
また骨からのカルシウムが流出するため、骨や歯がどんどん弱くなり、骨折しやすくなったり、骨粗しょう症などになる可能性もあります。
このように、食事からのカルシウム摂取量が不足しているにもかかわらず、骨のカルシウムが使用されることで、逆に細胞内や血液中のカルシウム濃度が高くなることをカルシウム・パラドックスと呼んでいます。
日本人は特にカルシウムが不足しがちだといわれています。カルシウムの不足状態が続くと次のような症状があらわれます。
カルシウム不足でもっとも大きな影響を受けるのが骨と歯です。
血液中のカルシウムは、カルシウムイオンのかたちで血清中に存在し、その濃度は常に一定に保たれています。
血液中のカルシウムが不足すると、副甲状腺ホルモンの働きにより、骨からカルシウムの吸収(骨のカルシウムが利用される)が促進され、血液中のカルシウム濃度を上昇させます。
体内カルシウムのうち、筋肉や神経組織などの細胞内外の体液中にあるものは、カルシウムイオンのかたちで存在しています。通常、細胞内より細胞外のカルシウムイオン濃度のほうが、1万倍も高くなっています。
カルシウムイオンは神経細胞において情報伝達する際に重要な働きをしています。
神経細胞同士は、完全に密着し、つながっているわけではなく、中継部分に少しすき間が空いています。この中継部分のことをシナプスと呼んでいます。
神経細胞の中を伝わってきた電気信号が神経細胞の末端(シナプス終末)にくると、細胞の外にあったカルシウムイオンが内部に流入します。流入したカルシウムイオンは、神経細胞内にあるタンパク質(カルモジュリン)と結合し活性化させます。活性化したタンパク質(カルモジュリン)によりアセチルコリンという情報伝達物質が神経細胞の末端より放出され、情報が次の神経細胞へと伝わっていくのです。
カルシウムイオンは、筋肉でも同様の働きをします。
筋肉を収縮させなさいという電気信号が運動神経を伝わり目的の筋肉に到着すると、筋小胞体という袋の中にあったカルシウムイオンが筋繊維内へ放出されます。放出されたカルシウムイオンは筋肉の収縮を抑制していたタンパク質(トロポニン)と結合し、抑制を解除します。するとエネルギーであるATP(アデノシン三リン酸)が作用し、筋肉が収縮するのです。
また、心臓の収縮にもカルシウムイオンが関係しています。
カルシウムを多量に摂ることで、大腸ガンや子宮内膜ガンの予防になるという報告があります。アメリカなどで、カルシウム摂取量の多い地域のほうが、大腸ガンの発生率が低いという結果がでているからです。
これはカルシウムが細胞を傷つける物質と強く結合することで、細胞に対する毒性を弱める働きがあるからだ、と推測されています。
また、メカニズムはまだ不明なものの、カルシウムには、女性持有の月経前にあらわれる精神的、身体的な不快感や苦痛などの症状をやわらげる働きがあることもわかっています。
とはいえ、カルシウムの過剰摂取にもそれなりのリスクがあることを忘れてはいけません。
ビタミンDにはおもにビタミンD2とD3があります。紫外線の働きにより体内でつくられるのはビタミンD3です。
ヒトの皮膚には7-デヒドロコレステロールと呼ばれるコレステロールの一種があり、紫外線によりビタミンD3に変化するのです。
食べ物からの摂取(特に魚介類やキノコ類に多い)または紫外線により生成されたビタミンDは、肝臓および腎臓で活性型ビタミンDになります。この活性型ビタミンDが小腸でのカルシウムの吸収を促進し、カルシウムが効率よく骨や歯になる手助けをしています。
このようにカルシウムだけ摂取していてもビタミンDがなければ、カルシウムがうまく機能しません。結果的にビタミンDが不足すると、カルシウムも欠乏することになるのです。
カルシウム(Ca)は体重の1.5%と、体内にもっとも多く存在する金属のミネラルです。体重1kgあたり15gで、体重70kgの人なら、そのうちの約1kgがカルシウムだということです。
体内にあるカルシウムの99%は、骨と歯の成分になっています。残りの1%のうち、0.9%は筋肉や神経組織などの細胞内外の体液に、0.1%は血液中にあります。
骨や歯の中のカルシウムは、リン(P)と結合したリン酸カルシウムの一種であるヒドロキシアパタイトという化合物になっています。
このようにカルシウムの主要な役割の1つは、骨や歯の成分になることです。
また、骨はカルシウムの貯蔵庫としても働いています。血液中のカルシウム量が減少すると、骨中のカルシウムが使用され血液中のカルシウム濃度を常に一定にしています。