モリブデンを含むおもな食品は、以下の表のとおりです。モリブデンは『五訂増補食品成分表いこはデータが掲載されていないので、『ミネラルの事典』のデータより抜粋しました。
モリブデンは、穀類、豆類などに多く含まれています。一方、魚介類、肉類にはあまり含まれていません。
穀類では、主食のこめ(精白米)に、100gあたり66μg、食パンは20μg、玄米120μgです。
そのほか、うどん(生)53μg、そば(生)69μgと、比較的食べる機会のある食品にも含まれています。
豆類も豊富で、だいずをもとにした糸引き納豆は100gあたり86μg、いんげんまめ150μg、そらまめ(全粒乾)200μgなどです。
また、豆系の野菜類であるえだまめ(生)140μgや、グリンピース(生)140μgにも含まれています。
藻類では、あおのり430μg、わかめ(素干し)160μgなど豊富なものもあります。
モリブデンを1日にどのくらい食事から摂ればよいのかを示した食事摂取基準は、下のページの表のとおりです。
モリブデンの必要量についてのデータは少なく、18歳未満については信頼度の高いデータはありません。
18歳以上のモリブデン摂取基準には推定平均必要量と推奨量、耐要上限量が設定されています。ただし、18歳以上のものについても信頼度がそれほど高いものではないので、注意する必要があります。
推定平均必要量は、ある母集団に属する50%の人が必要量を満たすと推定される1日の摂取量です。 18歳以上の男性で1日あたり20μg~25μg、女性で20μgとなっています。
推奨量は、ある母集団のほとんどの人が1日の必要量を満たすと推定される摂取量です。 18歳以上の男性で1日あたり25μg~30μg、女性で20μg~25μgとなっています。授乳婦はこれに+3μgです。日本人は1日に平均225μg以上は摂取していると推測されているため、欠乏することはありません。
耐要上限量についても、ヒトでの研究は少なく、おもに動物実験からのデータをもとにしてだされています。 18歳以上の男性で日あたり550μg~600μg、女性で450μg~500μgとなっています。
前述したように、通常の食事によるモリブデンの過剰症は、ほとんどないと考えられています。
モリブデンは通常の食事をしていれば、不足することはありません。栄養剤を投与する完全静脈栄養(TPN)を長期間実施した場合などにモリブデン欠乏になることがある程度です。
モリブデンが欠乏すると、順脈や多呼吸、頭痛、嘔吐、夜盲症、昏睡などの症状があらわれます。
また、モリブデンは比較的毒性の弱い金属で、過剰に摂取したものはすぐに排出されるため、通常の食事で過剰症になることもほとんどありません。
モリブデンは銅を排出する作用があるため、過剰に摂取すると、銅が欠乏します。その結果、造血力の低下による貧血になることがあります。
また、尿酸をたくさん生成することにより、関節の痛みなど痛風のような症状になることもあります。痛風は尿酸が蓄積することで起こるからです。
モリブデンを多量に摂取した場合の急性毒性では、下痢、胃腸傷害、昏睡状態、心不全などになる可能性があります。
モリブデン(Mo)は、ギリシア語で鉛を意味する金属のミネラルです。以前は鉛色をした鉱石の総称だったからです。
モリブデンは耐熱性や耐腐食性にすぐれているため、鉄などほかの金属と混ぜ合わせて合金にしたり、さまざまな機械や電子部品に使用されています。
生物にとってもモリブデンは、不可欠なミネラルです。特に植物(マメ科植物の根粒菌など)において、空気中の窒素を肥料となるアンモニアにするために必要な酵素(ニトロゲナーゼ)の構成成分になっています。
人体には約5mg含まれています。通常の食生活では、欠乏症や過剰症になることはほとんどありません。
食物から摂取したモリブデンは胃腸で吸収され、そのうちの3分の1は肝臓に蓄積され、3分の1は腎臓などほかの臓器へ、残りはすぐに排出されます。
人体でのモリブデンの重要な役割は、体内の老廃物をつくったり、有害物を分解する酵素の構成成分になっていることです。
具体的には、尿の成分である尿酸をつくる酵素(キサンチンオキシダーゼ)や、人体に有害なアルデヒド(たとえばアルコールを飲むとアセトアルデヒドがつくられ、二日酔いの原因になる)を分解する酵素(アルデヒドオキシダーゼ)、同様に人体にとって有害な亜硫酸イオン(大気汚染の原因物質)を毒性の低い硫酸イオンにする酵素(亜硫酸オキシダーゼ)などがあります。
また、鉄の利用を高めるなど造血作用にも関係があります。