食品に含まれている鉄には、おもにヘム鉄(主に二価鉄)と非ヘム鉄(主に三価鉄)あります。
ヘム鉄は肉類に多く含まれている鉄で、そのほかの食品に含まれている鉄は、ほとんどが非ヘム鉄です。そして、ヘム鉄のほうが非ヘム鉄よりも2倍から3倍、吸収率がよいので、鉄分の摂取には肉類が有効です。
非ヘム鉄の食品でも肉類やビタミンC(アスコルビン酸)といっしょに摂取すると、吸収率がアップすることがわかっています。
反対に食物繊維や加工食品などに多く含まれているリン酸、緑茶に含まれているタンニン酸、玄米や米ヌカ、種子類などに含まれるフイチン酸は、鉄の吸収を阻害します。
鉄を含む具体的な食品としては、なんといってもヘム鉄を多く含んでいる肉類、特にレバー(肝臓)です。魚介類もおもにヘム鉄を含んでいる食品です。
吸収率は低いものの非ヘム鉄を豊富に含んでいる食品には、藻類、豆類、種実類などがあります。
また、鉄製の調理器具を使用するのも、鉄を摂取する有効な方法の1つです。
鉄を1日にどのくらい食事から摂ればよいのかを示した食事摂取基準は、下記の表のとおりです。表のように鉄の摂取基準には推定平均必要量と推奨量、耐要上限量が設定されています。
推定平均必要量は、ある母集団に属する50%の人が必要量を満たすと推定される1日の摂取量です。
表には載せていませんが、鉄が不足しがちな初期の妊婦では推定平均必要量の各数値よりも+2mg、中期・末期の妊婦では各数値よりも+12.5mg、授乳婦では+2mgを加算したものになります。
推奨量は、ある母集団のほとんどの人が1日の必要量を満たすと推定される摂取量です。できれば推奨量程度の鉄分を摂取する必要があるというわけです。
同様に、初期の妊婦では推奨量の各数値よりも+2.5mg、中期・末期の妊婦では各数値よりも+15mg、授乳婦では+2.5mgを付加したものになります。
また女性の場合は、推定平均必要量と推奨量で月経がある場合(表のカッコ内の数値)も設定されています。ただし、これは一般的な月経量(月経出血量が80m1/回未満)の女性が対象で、それより多い過多月経の人は、より多くの鉄分を補給する必要があります。
一応、耐要上限量は設定されていますが、通常の食事をしていれば、鉄が過剰になることはほとんどありません。
厚生労働省による国民健康・栄養調査(平成20年)によれば、男性は平均8.4mg、女性は平均7.8mgの鉄を食事から摂取しています。
特に月経のある年代の女性で不足していることがわかります。
前述したように、食事からの鉄の摂取量が慢性的に少なかったり、月経やそのほかの理由による出血などで過剰に鉄を喪失すると、鉄不足になります。
鉄不足になると、まず肝臓や牌臓にある貯蔵鉄が利用されます。同時に食べ物からの吸収量も増加します。
それでも貯蔵鉄がなくなると、血液中にある血清鉄が使用されます。血清鉄濃度が減少すると、次はヘモグロビンが減少します。そしてヘモグロビンが減少した結果、鉄欠乏性貧血になるのです、要するにヘモグロビンが減少し、貧血になるのは、かなり鉄不足が進行した結果だということです。
このように鉄が不足したときにあらわれる症状としては、貧血や倦怠感、めまい、運動能力の低下、消化管の異常、舌や口内の炎症、皮膚や爪の異常、免疫力の低下などです。
反対に鉄が過剰になることは、通常の食事をしているかぎりほとんどありません。鉄が過剰になるのは、錠剤などの摂取によるものです。
鉄を一度に過剰摂取したときの症状としては、まず嘔吐や下痢になり、その後、けいれんや昏睡状態になり死亡する場合もあります。鉄を慢性的に過剰摂取すると、体内の組織や肝臓に沈着し、さまざまな障害を発生させます。
鉄は日本だけでなく、世界的に見てももっとも不足しがちなミネラルだといわれています。特に成長時期にある幼児や月経のある女性、妊婦、授乳婦などが鉄不足になる傾向にあります。
食べ物から摂取した鉄は小腸や十二指腸で吸収されます。しかし、成人の場合、通常は摂取した鉄の8%~10%程度と、ごくわずかしか吸収されません。大部分はそのまま排泄されてしまいます。加えて、もともと体内にあった鉄分も糞尿による排泄や、皮膚、毛髪など細胞の脱落により、ほぼ1日の吸収量と同じ量がでていきます。
それでも必要量を維持しているのは、貯蔵鉄として肝臓や肺臓に蓄えられていたり、さらに体内の鉄がリサイクルされているからです。たとえばヘモグロビンなどで使用された鉄は、ヘモグロビンが寿命を迎え分解されたあとも再利用されます。
また、体内の鉄分が不足してくると、それに応じて摂取した鉄の吸収率も大幅にアップします。
とはいえ、食事からの鉄の摂取量が慢性的に少なかったり、出血などにより過剰に鉄を喪失したりすると鉄不足になります。
特に月経のある女性は不足しがちです。正常な月経の出血量は最大で60ml~80mlです。 1mlあたり0.4mgの鉄が含まれているため、月経での鉄喪失は24mg~32mg程度になるということです。女性の食事からの鉄摂取量は1日あたり平均7.6mgほどなので、月経による喪失はかなり大きいことがわかります。
また、野菜類はあまり鉄を含んでいないため、極端な菜食主義も鉄不足になりがちです。
鉄は長くほおっておくとさびてしまいますが、さびるというのは化学的にいうと酸化している状態のことをいいます。
酸化というのは酸素と結びっくことです。逆に酸素を離すことを還元といいます。
ただし、これは狭義の酸化還元反応のことで、一般的には原子や分子、イオンが電子を放出することを酸化、電子を受け取ることを還元といっています。
要するに肺で酸素を受け取り(酸化)、末端組織で酸素を離す(還元)のも、鉄の酸化還元反応です。
さらに鉄は生体内での化学反応において、電子を受け取ったり、受け渡したりする酸化還元反応を手助けする酵素の働きをしているというわけです。
食べ物から摂取した鉄には、2価鉄(Fe2+)と三価鉄(Fe3+)があります。二価鉄は、酸化数が+2の鉄イオンのことです。電子を2つ放出した状態(酸化)なので+2になっています。
鉄は+2指腸と小腸で吸収されますが、2価鉄のほうが三価鉄よりも吸収されやすいため、三価鉄の一部は胃で還元され二価鉄に変化します。
ビタミンC(アスコルビン酸)も三価鉄を還元して二価鉄にする作用があるので、ビタミンC(アスコルビン酸)といっしょに摂るヒ吸収されやすくなります。
このように鉄は体内で2価鉄から三価鉄へ(酸化)、また逆に三価鉄から二価鉄へ(還元)と変化を繰り返しながら、さまざまな酸化還元反応の手助けをしています。
鉄のもっとも重要な働きは、全身の細胞へ酸素を運ぶことです。
血液の赤血球の中にある赤色のタンパク質がヘモグロビンで、鉄はこのヘモグロビンの成分です。
ヘモグロビンは骨髄の赤血球細胞でつくられます。新しくつくられたヘモグロビンは約120日間、体内で酸素を運搬したあと寿命を迎え、肺臓で分解されます。分解されたヘモグロビンの鉄は再利用されます。
ヘモグロビンは4つのヘムタンパク質からなり、それぞれに1つずつ鉄原子が結合した構造になっています。そして1つの鉄原子に1つの酸素分子が結合し、全身へ運ばれていきます。
酸素は酸素濃度の高い肺でヘモグロビンと結びつき、酸素濃度の低い組織で離れます。さらにヘモグロビンと結びついた酸素は酸性の環境下で離れやすい性質があるため、二酸化炭素濃度が高く酸性になっている組織で離れるというわけです。一方、2酸化炭素は血液中に溶けて肺へ運ばれ排出されます。
体内でも特にたくさんの酸素を消費する筋肉の中には、ミオグロビンというヘモグロビンと同じような鉄タンパク質があります、ヘモグロビンで運ばれてきた酸素は筋肉でミオグロビンに受け渡され貯蔵されます。そして必要に応じて利用されます。
ちなみに不完全燃焼のときなどに発生する一酸化炭素は、酸素の200倍もヘモグロビンと結合しやすい性質があります。そのため一酸化炭素濃度の高い場所では、一酸化炭素が優先的にヘモグロビンと結びついてしまい酸素不足になってしまうのです。
体内にある鉄の70%がヘモグロビンの構成成分になっていることからもわかるように鉄のもっとも重要な役割は酸素を全身に運ぶことです。そのため体内の鉄分が不足するとヘモグロビンが減少し、貧血になります。鉄の欠乏と貧血の関係は、すでに17世紀には知られていました。
そのほかにも鉄には、体内の酸化還元反応の促進や活性酸素の除去、免疫機能の維持、エネルギー物質であるATP(アデノシン三リン酸)の生成などの役目があります。
活性酸素とは、活性化し反応性が増した酸素のことです。活性酸素が体内に必要以上に増えすぎると、正常な細胞を傷つけたり、老化を促進するなど、さまざまな悪影響を与えます。
鉄を含む酵素であるカタラーゼやスーパーオキシドジスムターゼは、こうした活性酸素を分解する働きがあります。
鉄(Fe)は微生物からヒト、植物まで、あらゆる生物に必要な金属のミネラルです。
これは太古の地球上の海に生命が誕生した当初、その環境下に鉄が豊富に存在していたためです。周囲に多く存在する金属を生命活動に利用したというわけです。
体内の鉄は体重の約0.005%で、これは成人で約2g~4gになります。その70%近くは赤血球の成分であるヘモグロビンに含まれています。残りは筋肉や肝臓、肺臓、骨髄などにあります。
体内にある鉄のはとんどは、ヘモグロビンのように タンパク質と結合した鉄タンパク質として存在しています。
そして鉄タンパク質は、ヘムと呼ばれる構造をもったタンパク質(ヘムタンパク質)に鉄が結びついたヘム鉄(ヘモグロビンなど)と、ヘムをもたない非ヘム鉄(フェリチンなど)に分けることができます。
また体内の鉄は、二価鉄(Fe2うと三価鉄(Fe3+)に分類することもできます。2価鉄は、酸化数が+2の鉄イオンのことです。電子を2つ放出した(酸化)状態なので+2になっています。ヘム鉄はおもに二価鉄で、非ヘム鉄はおもに三価鉄です。
体内の鉄をその働きから2つに分けることもできます。
赤血球のヘモグロビンや筋肉のミオグロビンにある鉄などのように、生命維持に欠かせない働きをしているものを機能鉄、肝臓や肺臓などでフェリチンやヘモシデリンというタンパク質と結びついて蓄えられているもののことを貯蔵鉄といいます。