クロムを含むおもな食品は、表のとおりです。クロムも『五訂増補食品成分表」にデータが掲載されていないので『ミネラルの事典』のデータより抜粋しました。
クロムは、豆類、種実類、藻類、魚介類、肉類などに多く含まれています。野菜類にはあまり含まれていません。
穀類は、表には掲載しませんでしたが、主食のこめ(精白米)に100gあたり9μg、食パンは10μgです。
もっとも豊富なのは藻類です。 100gあたり、わかめ(素干し100μg、干しひじき270μg、あおのり480μgとなっています。
クロムを多く含んでおり、かつ摂取しやすい食品として、魚介類と肉類があります。魚介類では、100gあたり、うなぎ25μg、あさり45μg、肉類では、ぶた(ベーコン)39μg、うし(コーンビーフ缶詰)44μgなどです。
そのほか、プロセスチーズにも100gあたり54μg、抹茶にも92μgと多くのクロムが含まれています。
クロムを1日にどのくらい食事から摂ればよいのかを示した食事摂取基準は、下のページの表のとおりです。
クロムの必要量についての研究データは少なく、おもに海外の研究にもとづいて数値をだしています。 18歳未満については信頼度の高いものがないため、だされていません。
18歳以上のクロム摂取基準には、推定平均必要量と推奨量が設定されています。
推定平均必要量は、ある母集団に属する50%の人が必要量を満たすと推定される1日の摂取量です。 18歳以上の男性で1日あたり30μg~35μg、女性で20μg~25μgとなっています。
推奨量は、ある母集団のほとんどの人が1日の必要量を満たすと推定される摂取量です。 18歳以上の成人男性で1日あたり35μg~40μg、女性で25μg~30μgとなっています。
通常の食事をしているかぎり、クロム摂取量が不足することはないと考えられています。
耐要上限量は設定されていませんが、食品に含まれている3価クロムは毒性が低く、通常の食事で問題になることはないと考えられています。
ただし、前述したようにサプリメントなどにより、大量摂取した場合は摂りすぎによる問題が発生することがあるので注意が必要です。
クロムが人体にとって必要なミネラルであることがわかったのは、クロムを含んでいない完全静脈栄養(TPN)を投与している患者が糖尿病になった際に、血糖値を下げるインスリンを投与しても効果がなかったのにクロムを投与することで改善したからです。
クロムはインスリンの働きを高める作用があるため、クロムが不足すると血糖値が上がり糖尿病になるのです。
さらに脂質代謝、コレステロール代謝にも関係しているので、高血圧や動脈硬化、心臓病、高脂血症、高コレステロール血症などになる可能性があります。そのほかにも、成長障害、角膜疾患、末梢神経障害などが起きることもあります。ただし、通常の食生活をしているかぎり、クロムが不足することはほとんどありません。
クロム不足になる原因は、極端にクロム含有の低い食品ばかり摂っている場合や未熟児、妊娠・出産時などです。
また、糖分を多く摂ったり、糖尿病患者もクロム不足になりがちです。それは血中のクロム量が増加し、尿として排出されるクロム量も増すからです。結果的に悪循環になります。
食品に含まれているクロムは3価クロムで、毒性も低く過剰症になる心配はほとんどありません。ただし、サプリメントなどにより長期間摂取した場合は、中毒症状を起こすことがあるので注意が必要です。
クロムの過剰症としては、嘔吐、腹痛、下痢、肝障害、造血障害、中枢神経障害などがあります。毒性の強い6価クロムを扱っている工場などでクロムに曝露すると、皮膚炎や鼻粘膜の腫れや充血、気管支炎、ぜんそく、さらに肺ガンになる可能性があります。
クロム(Cr)は、ギリシア語で色を意味する言葉にちなみ名づけられました。色が鮮やかな金属だからです。
ほかの金属と混ぜて合金にしたり、メッキとして広く使用されています。腐食性にすぐれているため台所用品などさまざまな用途に利用されているステンレスは、クロムと鉄やニッケルの合金です。また、電熱線として使用されているニクロム線はクロムとニッケルの合金です。
クロムには、3価クロム(Cr3+)と6価クロム(Cr6+)があります。自然界や体内に存在しているクロムの多くは3価クロムです。メッキなどに使用されることが多い6価クロムは非常に毒性が強く、以前、公害問題としても話題になりました。
人体には約2mg含まれていますが、体内のクロムの存在量は食生活や環境に影響されやすいため、地域によって大きな差があります。また、年齢が増すにしたがい、体内のクロム量も減少していくことが知られています。体内では肝臓、腎臓、すい臓、血痕中など各組織に分布しており、細胞内では核内に多く存在しています。
クロムのおもな役割は、糖代謝や脂質代謝、コレステロール代謝、結合組織代謝、タンパク質代謝を維持することです。
食物から摂取した糖分はブドウ糖となり血中へ入ります。ブドウ糖は、すい臓から分泌されるインスリンにより分解され、エネルギー源として利用されます。クロムはインスリンの働きを高める作用があるのです。体内のクロムが減少すると糖尿病になる可能性が強くなります。
さらに、中性脂肪やコレステロールを減少させ、筋肉を増強する働きもあります。このためアメリカでは、ダイエットや筋肉増強のサプリメントとしてクロム(ピコリン酸クロム)が使用されています。ただし、長期間摂取すると中毒症状がでる場合もあるので、注意が必要です。