バナジウム(V)は、北欧神話の愛と美の女神バナディスにちなんで名づけられた銀白色の金属です。鉄などに混ぜ合わせた合金として使用されています。
ヒトの体内には約200μgのバナジウムが存在していますが、ヒトでの必須性はまだ証明されていません。
ただし、ヒヨコやラットでは必須ミネラルであることがわかっています。バナジウムが不足したヒヨコでは羽毛の発育不足やコレステロールの低下が見られ、またラットでも成長障害が起きることがわかりました。
ヒトではバナジウム不足による障害は報告されていません。ヒトの体内での代謝や働きについても、まだ不明な点が多いのが現状です。
バナジウムの働きとして注目されているのは、血糖値を下げる効果があるのではないかと推測されていることです。このため現在、糖尿病に対する治療薬として有効なのではないかと研究が進められています。
バナジウムの過剰症としては、工場でバナジウムを取り扱う大の間で、過剰に吸入した場合などに慢性気管支炎や神経衰弱、貧血、アレルギーなどの症状があらわれることがあります。 バナジウムが含まれている食品としては、わかめ、こんぶなどの藻類、はまぐり、かき、いわし、さばなどの魚介類、ほうれんそう、だいこん、きゅうり、キャベツといった野菜類などです。
そのほか、抹茶、だいず、牛乳、鶏卵などにも含まれています。
コバルト(Co)は、古くからガラスや陶磁器を青く彩色するのに用いられてきた金属です。
体内に約2mg含まれており、ビタミンB12の構成成分になっています。
ビタミンB12は、ヒトが体内でつくることのできないビタミンです。そのため食物として摂取する必要があります。
ちなみにウシやヒツジなどは、胃の中にいる徹生物の働きによってコバルトからビタミンB12をつくることができます。コバルトが必須ミネラルであることがわかったのも、コバルト含有量の少ない土地で育てられていたヒツジが、貧血性の病気にかかったことがきっかけでした。
このようにコバルトはビタミンB12として摂取すればよいというわけです。そして、コバルトはビタミンB12として体内でさまざまな働きをしています。
ビタミンB12は赤血球の核酸の生成に関係しているため、不足すると悪性貧血(頭痛、めまい、吐き気、動悸、息切れなどの症状)を起こします。また、食欲不振や集中力の低下をまねくこともあります。
ビタミンB12を多く含む食品は、魚介類や肉類などの動物性食品です。野菜類などの植物性食品には、ほとんど含まれていません。極端な菜食主義の人は、ビタミンB12が不足する可能性があるので注意が必要です。
コバルトおよびビタミンB12の食品による過剰症は、特に報告されていません。
塩素(C1)は非金属のミネラルで、塩化ナトリウム(食塩)の成分です。食塩の成分であることから、日本語では塩素と名づけられました。
塩素ガスは第一次世界大戦に毒ガスとして使用されたこともある、非常に毒性の強い物質です。農薬や医薬品など化学薬品の原料のほか、漂白剤や殺菌剤としても利用されています。ただし、塩素系の農薬は人体に対する有害性から、製造や使用が禁止されました。そのほか、塩素を含む毒性の強い化学物質としては、有名なダイオキシン類があります。日常生活でも塩素を含んだ漂白剤を別の洗剤などと同時に使用すると、塩素ガスが発生することがあるので注意が必要です。
ヒトの体内に塩素は、体重70kgの成人で約105gの塩素が含まれています。そのほとんどは塩素イオンとして、体液や血液中に存在しています。これら塩素イオンは、細胞内外の浸透圧の調節や血液の酸性、アルカリ性(pH)の維持などの役目があります。
また、消化液として胃液中の胃酸に含まれている塩酸(HC1)の構成成分になっています。さらに、タンパク質分解酵素の活性化や各種ビタミン類の吸収促進をします。ほかにも害のある細菌類を殺菌し、逆に有益な細菌を働きやすくしたり、肝臓の機能を助け老廃物を排出する作用があります。
塩素は食塩の成分なので、通常の食事から十分摂取されており、欠乏することはありません。逆に食塩を過剰摂取しないようにすることがたいせつです。
硫黄(S)は古くから化学製品や医薬品、火薬やマッチの原料などにも利用されてきた非金属の元素です。
火山地帯にある温泉に行ったときにする卵が腐ったような臭いは、硫黄を含む硫化水素ガスのためです。硫黄泉は抗炎症、抗アレルギー効果があり、アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患やリウマチなどに対する効能があるとされています。
ヒトの体内に硫黄は、体重70kgの成人で約175g含まれています。特に骨や軟骨、腱、皮膚、爪、髪などに多く含まれています。
硫黄は栄養分として必要な必須アミノ酸であるメチオニンやシスチン、システインなどの構成成分になっています。このように硫黄を含むアミノ酸のことを含硫アミノ酸といいます。アミノ酸はタンパク質の構成成分なので、硫黄もタンパク質の生成に欠かせない成分だということです。
ほかにもビタミンB1と結合して糖質や脂質の代謝に関係したり、鉛や水銀、ヒ素など有害なミネラルを体外へ排出し、蓄積するのを防ぐ作用があります。
硫黄が欠乏すると、皮膚炎や肌荒れ、脱毛、爪がもろくなるなどの症状があらわれるようになります。また、有害なミネラルに対する解毒力も低下します。
とはいえ通常の食生活をしていれば、硫黄が欠乏したり過剰になることはほとんどありません。そのため硫黄に対する摂取基準は定められていません。
硫黄が比較的多く含まれている食品としては、肉類、魚介類、卵、牛乳、豆類などがあります。