日本人の場合、おもにごはんや食パンなど穀類から亜鉛を摂取しています。こめ(精白米)は100gあたり0.6mg、食パンは0.8mgの亜鉛を含んでいます。
亜鉛が多い食品には、肉類、魚介類、豆類、種実類などがあります。なかでも肉類は、全般的に亜鉛の含有量が多い食品です。亜鉛はタンパク質といっしょに摂取すると吸収率もよいことがわかっているので、そういう意味でも肉類は、亜鉛摂取にすぐれた食品です。
同様に魚介類、特に貝類も亜鉛が豊富です。かきは100gあたり132mgと、多量の亜鉛を含んでいます。
ほかには、豆類で、そらまめ(全粒乾)が100gあたり4.6mg、だいず(国産乾)32mg、糸引き納豆1.9mgです。
種実類では、ごま(いり)が100gあたり5.9mg、カシューナッツ(フライ味付け)54mgなどがあります。
ただし、豆類や種子類などは亜鉛の吸収を阻害するフィチン酸も含んでいるため、吸収率はあまりよくありません。
ほかには、卵黄(生)が100gあたり42mg、ピュアココアが7.0mgと亜鉛が豊富です。
亜鉛も鉄分などと同じように、食物繊維や豆類、種子類などに含まれているフィチン酸や加工食品などに多く含まれている添加物などにより、吸収を阻害されます。1960年代に中近東で発生いた亜鉛不足による発育不全も、フィチン酸を多く含む食事を摂取していたことが原因の1つでした。亜鉛摂取についても、バランスのよい食事を摂ることがたいせつです。
亜鉛を1日にどのくらい食事から摂ればよいのかを示した食事摂取基準が、下記の表です。表のように亜鉛の摂取基準には推定平均必要量と推奨量、耐要上限量が設定されています。
推定平均必要量は、ある母集団に属する50%の人が必要量を満たすと推定される1日の摂取量です。推奨量は、ある母集団のほとんどの人が1日の必要量を満たすと推定される摂取量です。
できれば、推奨量程度の亜鉛を摂取していればだいじょうぶだということです。成人の男性で1日あたりの推奨量は12mg、女性で9mgになっています。妊婦はこれに+2mg、授乳婦は+3mgです。
厚生労働省による国民健康・栄養調査(平成20年)によれば、成人の場合、男性は1日平均8.9mg、女性は7「3mgの亜鉛を食事から摂取しています。このことから亜鉛の摂取が少し不足気味であることがわかります。
また、ダイエットや菜食などかたよった食事をしていると、亜鉛が不足することが多いので特に注意が必要です。
耐要上限量とは、ほとんどすべての人々が健康障害をもたらす危険がないとみなされる習慣的な摂取量の上限量のことです。
1日あたりの耐要上限量は、男性が40mg~45mg、女性が30mg~35mgになっています。
亜鉛が不足すると、性的な機能障害や味覚障害になることは前述したとおりです。そのほかにも、亜鉛はタンパク質の合成や細胞分裂の促進、骨の成長を助けるなどの働きがあるため、身体の成長に影響し、発育不全の原因になります。
脳内の発育や刺激伝達にも関係しているので、不足すると知能や学習能力の低下、精神障害になることもあります。
1960年代にイランやエジプトなど中近東で発生した発育不全の症状の改善に、亜鉛が有効であることから明らかになってきました。イランの子供たちが亜鉛不足になったのは、亜鉛の吸収を阻害するフィチン酸を多く含む植物性の食事が中心になっていたからです。さらに、亜鉛が不足すると免疫機能も弱くなり、風邪などの感染症にかかりやすくなったり、傷が治りにくくなります。皮膚や毛髪の生成もうまくいかなくなるため、肌荒れや皮膚炎、爪の異常、脱毛などの症状があらわれます。
また、網膜の視覚色素の生成にも関連しているため、不足すると暗闇での視力低下、色盲などの視覚障害にもなります。
少し特殊な例としては、スポーツ選手の問で発生しやすいスポーツ貧血と呼ばれるものです。これはスポーツ選手がエネルギー消費量に見合った亜鉛や鉄を摂取していないためだと考えられています。運動により、汗や尿として排出される量も増加するためです。加えて、亜鉛は赤血球自体の構成成分でもあるため、亜鉛不足は赤血球の不足にもつながります。
反対に亜鉛が過剰になると、銅や鉄の吸収が阻害されることが知られています。慢性的な亜鉛過剰の症状としては、善玉コレステロールと呼ばれているHDLコレステロールの低下や貧血などになります。急性的な亜鉛中毒症状では、吐き気、胃腸障害、神経障害、腎臓やすい臓障害などが見られます。
ただし、通常の食事を摂っていれば、亜鉛が過剰になることはほとんどありません。
味覚には甘い(甘味)、塩からい(塩味)、すっぱい(酸味)、苦い(苦味)という4つの基本感覚があります。もう1つ、うま味を加えて5つとする場合もあります。
味覚があるのは、生きていくうえで必要な食物と危険な食物を見分けるためです。甘味があれば、エネルギー源である糖分を含んでいることがわかります。塩味により、塩分をはじめとするミネラル類を含んでいることがわかります。うま味も、アミノ酸など必要な物質を含んでいることを示しています。
反対に、酸味は一般的に食物が腐っているシグナルになります。また、苦味のあるものは毒物である場合が多いのです。そのため、酸味や苦味を本能的にさけるようになっているのです。子供が酸味や苦味を嫌うのもそのためです。
舌で味を感じるのは、味を含んだ唾液が舌の表面にある味蓄の味覚細胞を刺激するためです。味蓄は花のつぼみのような形をしていることから名づけられました。
この味覚細胞は、常に新しいものにつくりかえられています。亜鉛は細胞分裂を促進する働きがあるので、新しい味覚細胞をつくるのにも不可欠です。そのため亜鉛が不足すると、味覚細胞の生成が不十分になり、味に対する感覚がにぶくなっていくのです。
味覚障害になる原因には、ほかにも薬や病気による影響などさまざまなものがありますが、約30%は亜鉛不足が関係していると考えられています。
亜鉛はセックスミネラルとも呼ばれているように、性機能を維持する働きをしています。
精液をつくる前立腺や、精子と男性ホルモンをつくる精巣(睾丸)などの性腺には、亜鉛が多く存在しています。こうした場所で亜鉛は、精子や男性ホルモンであるテストステロンの生成に関係しています。
脳下垂体から分泌される性腺刺激ホルモンの分泌にも亜鉛が関連しており、性腺刺激ホルモンにより、精液や精子、性ホルモンの生成や分泌が促進されます。そのため亜鉛が不足すると、男性では精液や精子の減少、男性ホルモンの減少、勃起障害、前立腺肥大、性腺の発育不全などの症状があらわれます。
性腺刺激ホルモンは、女性ホルモンのエストロゲンの分泌促進や排卵にも関連しているため、亜鉛が不足すると、女性の場合、月経異常や不妊症の原因になることもあります。
亜鉛(Zn)は、体重60kgの成人で体内に約2g存在している金属のミネラルです。
日常、よく見かけるトタンは、薄い鉄の板の表面を亜鉛でおおったものです。また、亜鉛と銅の合金がシンチュウです。
体内にある亜鉛のうち約60%は筋肉に、約25%は骨にあります。残りは血液中や肝臓、前立腺など全身の組織、細胞内に分布しており、そのほとんどはタンパク質と結合しています。
人体に対する亜鉛の重要性が明らかになってきたのは、1960年代以降のことです。亜鉛は200種以上の酵素の構成成分になるなど、酵素反応の活性化や体内のさまざまな代謝活動に欠かすことのできないミネラルであることがわかってきたのです。
さらに、タンパク質や骨、ホルモンの合成、細胞分裂に関係しているため、身体の成長や脳の発育に非常に重要です。
免疫機能を維持するとともに、細胞分裂を促進する機能があるので、傷や組織を修復する働きもしています。
また、亜鉛はセックスミネラルと呼ばれることがあるように、性ホルモンや精子の生成など、性機能にも関係しています。
最近、特に注目されるようになったのが、亜鉛と味覚の関係です。若い女性などの間で、味覚機能が低下する味覚障害が増えており、その原因として亜鉛不足が指摘されているからです。
そのほか、すい臓から分泌され、血液中の血糖値を下げる役割をしているインスリンの生成と貯蔵、活性酸素の除去などの働きもしています。